☆発声フィジカル・エクセサイズ研究会は非営利組織です Biweekly Physiex Voice Magazine ◆発声は面白くて深い!Let's声の筋トレ(無料)◆ vol.019 2015.11.02号 【vol.019 目次】 01. 発声&運動トレーニングトピックス ・音声障害の教師は欠勤が多い ・ニュージーランドの教師の声 02. 発声のワンポイント解説 ・解説第19回 高音発声 03. 気になるボイスコラム  ・気になるその19 映画「櫻の園」のストレッチが気になる 04. (新)発声フィジ・エクセ事例紹介 ・ケース01 脳梗塞後2年、著明な過緊張発声の70代男性 05. 編集後記 ☆メルマガ過去記事はこちら→ http://physiexvoice.side-story.net/ ◆01. 発声&運動トレーニングトピックス◆ ☆発声や運動トレーニングに関する最新の知見や気になるトピックスをご紹介します 【019-1】音声障害の教師は欠勤が多い 「Voice Disorders in Teachers: Clinical, Videolaryngoscopical, and Vocal Aspects」 Eny Regina B?ia Neves Pereira, Elaine Lara Mendes Tavares, Regina Helena Garcia Martins Journal of Voice Vol 29, Issue 5, 2015, p564-571 http://www.jvoice.org/article/S0892-1997(14)00205-7/abstract 90名の教師と90名の一般人に声の症状・労働条件を訊き、ビデオ内視鏡で喉頭状態を調査したという研究。 結果、両群で声の症状の発生率に大きな差はなかったが、教師では欠勤が多かったとのことでした。 学校の先生はしゃべるお仕事ですから、声が充分出なければ仕事にならないのは当然です。 出勤すれば無理にでも声を使ってしまうので、欠勤せざるをえないというのは本当に辛いですね。 大切なお休みをこんなことで費やしてしまわないためにも、声が悪くならないような予防策の啓発と普及が特に学校の先生には不可欠でしょう。 【019-2】ニュージーランドの教師の声 「Voice Problems in New Zealand Teachers: A National Survey」 Sylvia H. de S. Le?o, Jennifer M. Oates, Suzanne C. Purdy, ほか Journal of Voice Vol 29, Issue 5, 2015, p645.e1?645.e13 http://www.jvoice.org/article/S0892-1997(14)00259-8/abstract ニュージーランドの教師1,879名に声の症状の有無や対応法などを調査したところ、33.2%が声の問題を経験しており、うち30%が回復に1週間以上要し、約28%が3日以上休んでいたとのこと。 特に女性は回復に時間を要し、より多くの休みを取っていたそうです。しかしその中で声の相談に訪れた者は22.5%に過ぎなかたようです。 こちらはニュージーランドの教師で調査した研究です。やはり多くの休みをとっていますが、特に女性に多く、しかも長引いているとのこと。 専門機関にも5人にひとり程度しかかかっておらず、声の健康対策はまだまだのようです。 どんな職業でも健康維持はとても大切なことですが、教師などの専門職ではなおさらです。職業病などと言って片付けず、国を挙げての対策が必要でしょう。 ◆02. 発声のワンポイント解説◆ ☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、 テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆ 【解説第19回】 高音発声 かすれ声の気息声を改善させるためによく使われる方法のひとつに高い声で発声練習する、というものがあります。 また、ハスキーボイスの人で、地声はかすれてハスキーなのに、高い音はクリアな声が出ていることがしばしばあります。 高い声が出る仕組みは、ひとつには輪状甲状筋が収縮することによって声帯が引っ張られ前後径が伸びるため、もうひとつは外側輪状被裂筋が収縮することによって声帯が薄くなるためです。 輪ゴムを張って弾くと音がでますが、伸ばしてピンと張れば張るほど音が高くなります。輪状甲状筋の収縮は輪ゴムをピンと張っているのと同じ仕組みに当たります。 また、使う輪ゴムが太いものと細いものでは細いほうが高い音が出ます。外側輪状被裂筋の収縮は輪ゴムを細くしていると思っていただけると良いと思います。 さて、気息声は声門閉鎖不全により生じます。 左右の声帯の隙間が広すぎる場合には効果はありませんが、隙間が少しだけであれば輪状甲状筋を収縮させ声帯をピンと張ることで隙間を埋めることができる可能性がでてきます。 なぜなら通常の声を出す際の声帯は通常は緩んだゴムのようになっていますので、隙間が生じやすいのですが、ピンと張れば隙間が埋まりやすくなるからです。 従って気息声を改善させるためには、輪状甲状筋の収縮がひとつのポイントになります。 しかしこれだけでは充分声帯を伸ばせない場合ももちろんあります。輪状甲状筋の収縮には限りがあるからです。 その場合は喉頭を全体に上に挙げるという方法があります。喉仏が上に挙げる感じですね。 声帯の根元が固定されていて先端が上がれば声帯は全体に伸ばされることになります。顎を上げて上を向いても同じような効果があります。 高音発声が気息声やハスキーボイスを改善させるのはこにような仕組みによります。 ◆03. 気になるボイスコラム◆  ☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ [1] 【気になるその19】 映画「櫻の園」のストレッチが気になる◇声の不思議 映画「櫻の園」のストレッチが気になります。 「櫻の園」という映画をご存知でしょうか。 もう25年も前の1990年に公開された邦画ですが、女子校の演劇部を舞台にチェーホフの戯曲「櫻の園」の上演に取り組む高校生の人間模様を描いて多数の映画賞も取った名作です。 劇中で演劇部員たちは上演前に揃って屋上に行き、ストレッチをしながら発声練習をするのですが、そのシーンが非常に躍動的でなぜだか今でも鮮明に印象に残っています。 もちろん映画の演出上でも、上演中止か上演か職員会議で揺れている中、上演を信じて準備を怠らない部員たちを見せている実は重要なシーンなのですが、気になったのはストレッチ内容です。 映画ではずいぶん色々なストレッチをしていました。発声のストレッチってこんな風にするものなのでしょうか。 よくなされるストレッチとはどんなものでしょうか。気になります。 まずストレッチをするなら、発声が喉頭筋と呼吸筋によってなされることから考えて、このふたつを対象とするのが妥当でしょう。 上下を向く首の運動は喉頭筋の舌骨上筋・舌骨下筋のストレッチになります。これをすると声の高低が出しやすくなるでしょう。 首の回転も同じような効果があると思われます。左右に首を回す運動は胸鎖乳突筋に主に効くストレッチですから喉頭というよりは呼吸の補助に役立つ感じです。 両腕の上げ下げや腕を左右に大きく振って体幹をねじる運動は呼吸筋である肋間筋のストレッチになります。大きな声や長い声を出す準備になるでしょう。 上体の前屈・後屈運動はちょっと微妙ですが呼吸筋である腹直筋のストレッチになっているかもしれません。 ちょっと考えて主なものはこんなところですが、映画では跳躍とか動きながらの発声とかもっと色々な複雑なことをやっていました。 正直、それらはどのような目的でなされていたのかわかりません。構成からして全くのフィクションとは考えられず、何らかの出典があると思われます。 発声のためだけでなく、演技しやすくするために全身を伸ばしていたとも考えられます。 発声に姿勢は大きく影響しますので、ひょっとすると無理のない姿勢をとるために全身をほぐしていたということかもしれません。 それとも実は知られざる効果が他にあるのでしょうか。映画であったあの躍動的で複雑なストレッチはそれぞれに深い目的があるのでしょうか。 映画「櫻の園」での複雑なストレッチの意味が気になります。 ◆04.(新)発声フィジ・エクセ事例紹介 ☆発声フィジ・エクセの実施事例をご紹介します☆ 【ケース01】 脳梗塞後2年、著明な過緊張発声の70代男性 70代男性。2年前脳幹梗塞(ワレンベルグ症候群)。気息声と粗ぞう声が著明で、声は非常に高く翻転もしばしばあり。 発声時には喉頭挙上がみられ過緊張傾向が著明。発声持続は3秒程度。声量はやや乏しい程度。呼吸・発音問題なし。 喉頭の過緊張軽減を目的に、頭部の回旋ストレッチと喉頭下部側方ストレッチ・喉頭周辺部ストレッチ・舌ストレッチと喉頭マッサージ+喉頭下制発声+h起声母音練習で週5回+自主トレーニング1日3回で実施。 開始1週間後頃より、時折練習中に母音で低い地声発声が出現。練習中、気息声・粗ぞう声軽減。 開始2週間後頃より、少し練習すると母音で低い地声発声可。普段でも気息声・粗ぞう声軽減。重母音・長母音練習追加。 開始3週間後頃より、普段でも低い地声発声が聴かれるようになる。粗ぞう声は目立たなくなる。気息声は日によって差あり。h起声練習カット、単語練習追加。 開始4週間後頃より、短文練習追加。時と場合によって差あり安定しないものの、気息声のない低い地声発声が比較的可能となりトレーニングは終了となった。 コメント:ご本人によると以前はむしろ低い声だったとのこと。はっきりはしませんが脳幹梗塞で過緊張発声になった可能性が考えられました。 とすると2年も経過しており固定化してずいぶん経つことになるため改善には困難が伴うことが予測されましたが、発声トレーニングは未経験とのことでしたのでやってみました。 プログラムはかなり重点化し、自主トレーニングも相当やっていただきました。幸いご本人はとても熱心で自主トレーニングにもしっかり取り組まれていました。 経過が長いため安定発声には至りませんでしたが、約1ヶ月でかなり改善し終了しました。 ■QAコーナーへのご質問もお待ちしております。  → http://physiexvoice.client.jp/mail.html ◆05. 編集後記◆ 今号からさらに発声フィジ・エクセの普及・実践を目指して新企画「発声フィジ・エクセ事例紹介」を掲載いたします。 発声フィジ・エクセの実施事例をご紹介することにより、皆様に発声フィジ・エクセの実際をイメージしていただき、実践へと繋げていただければと存じます。 QAおよび「10年後の発声トレーニング」と号替わりで掲載していきます。ご意見・ご感想・ご要望などありましたらぜひお寄せください。 ■次号vol.020発行予定 2015年11月16日 ■発行人・編集人:  発声フィジカル・エクセサイズ研究会 主宰 渡邉佳弘(言語聴覚士・学術博士)  → http://physiexvoice.client.jp/ ■このメルマガは声という現象に興味を持っていただくこと、 「発声フィジカル・エクセサイズ」という発声トレーニング法を 知っていただくことを目的としています。 ■発声フィジカル・エクセサイズは、解剖学と運動生理学に基づき、 ストレッチと無酸素運動による科学的かつ難易度別のトレーニングで 発声の問題の軽減・解消を目指すトレーニング法です。 トレーニング法の詳細は→ http://physiexvoice.client.jp/ ■発声フィジカル・エクセサイズは高齢者・認知症・廃用症候群の方にも 効果的なことが特徴です。 ■発声フィジカル・エクセサイズ研究会は、新しい発声トレーニング法 「発声フィジカル・エクセサイズ」の普及・発展を目的とした活動をしています。 トレーニング法の詳細は→ http://physiexvoice.client.jp/ ■メールマガジン購読手続きをされた方は、発声フィジカル・エクセサイズ研究会の 会員扱いとなり、実技講習を受けたり、メルマガのQAで質疑応答ができます。 ご質問は→ http://physiexvoice.client.jp/mail.html ■内容に関するご質問・お問い合わせ先:  → physi.ex.voice@gmail.com  または下記メールフォームから  → http://physiexvoice.client.jp/mail.html ■QAコーナーへのご質問をお待ちしております。 ご注意  本メールのアドレスは送信専用のため、メールアプリの  返信機能で返信いただいてもメールは届きません。  上記アドレス宛にお願いいたします。 メールが届かない場合は迷惑メール等に分類されている場合がありますので メールソフトのドラフトフォルダなどをお確かめください。 ■メルマガ過去記事:→ http://physiexvoice.side-story.net/ ■twitter:→ https://mobile.twitter.com/physiexvoice ■発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ ■購読解除はこちら: → http://www.mag2.com/m/0001647835.html ■発行システム:『メルマ!』 http://melma.com/ ■購読解除はこちら: → http://melma.com/backnumber_00198810/ (C) 発声フィジカル・エクセサイズ研究会. 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