━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Biweekly Physiex Voice Magazine 発声は面白くて深い!Let's声の筋トレ(無料) vol.005 2015.04.06号 (毎月第一・第三月曜日発行) 発行:発声フィジカル・エクセサイズ研究会 http://physiexvoice.client.jp/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ コンテンツはこちら ■□■□■□■□■□■□■□■□■ 【vol.005 目次】 01. 発声&運動トレーニングトピックス 02. 発声のワンポイント解説 03. 気になるボイスコラム  04. 声のなんでもQA 05. 編集後記 ■□■□■□■□■□■□■□■□■ ☆このメルマガは声という現象に興味を持っていただくこと、「発声フィジカル・エクセ サイズ」という発声トレーニング法を知っていただくことを目的としています。 ☆発声フィジカル・エクセサイズは、解剖学と運動生理学に基づき、ストレッチと無酸素 運動による科学的かつ難易度別のトレーニングで発声の問題の軽減・解消を目指すトレー ニング法です。 トレーニング法の詳細は→ http://physiexvoice.client.jp/ ☆発声フィジカル・エクセサイズは高齢者・認知症・廃用症候群の方にも効果的なことが 特徴です。 ☆発声フィジカル・エクセサイズ研究会は、新しい発声トレーニング法「発声フィジカ ル・エクセサイズ」の普及・発展を目的とした活動をしています。 トレーニング法の詳細は→ http://physiexvoice.client.jp/ ☆メールマガジン購読手続きをされた方は、発声フィジカル・エクセサイズ研究会の会員 扱いとなり、実技講習を受けたり、メルマガのQAで質疑応答ができます。 ご質問は→ http://physiexvoice.client.jp/mail.html ☆メルマガ主要記事はこちら→ http://physiexvoice.side-story.net/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆01. 発声&運動トレーニングトピックス◆ ☆発声や運動トレーニングに関する最新の知見や気になるトピックスをご紹介します☆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【005-1】走ると太る? 吉川メソッド 「堀江貴文のQ&A vol.403?走ると太る!??」 リンク→ http://www.youtube.com/watch?v=EBk8FC2c2dY 少し前からメディアでよく取り上げられている吉川メソッドの吉川朋孝さんの登場する インパクトのある動画です。衝撃的な見出しですが、太るといっても実は走って遅筋を鍛 えても普段の基礎代謝で脂肪燃焼させるような体にはなりにくいよ、ということで、別に 走ると脂肪がつくとかそういう話ではありません。ちなみに吉川メソッドは、解剖に基づ いて補助筋や協働筋を使わず、目標の筋肉だけを使わないとできないトレーニングメニュ ーで運動させる方法体系のようです。吉川さんのセンセーショナルな物言いとかマスコミ 向けの派手なパフォーマンスとか値段の高さとか、そのあたりが気にかかる人も多いみた いですね。ダイエット方法としてはよくわかりませんが、トレーニングの理論は一応納得 できるものです。 【005-2】感動的な歌ではビブラートが強くなる? 「The Effects of Emotional Expression on Vibrato」 Christopher Dromey, Sharee O. Holmes, J. Arden Hopkin, ほか journal of voice Vol 29. Issue 2, 2015, p170?181 リンク→ http://www.jvoice.org/article/S0892-1997(14)00126-X/abstract 10人の大学院生歌手を対象に感動的な歌ではビブラートがより顕著になるか周波数や強 さなどの音響的特徴を調べた研究です。結果、感動的な歌のビブラートは単なる母音発声 のビブラートよりは顕著だったものの、中間的な歌との比較ではあまりはっきりしなかっ たとのことでした。ここは微妙ですね。ビブラートを無意識にやっている歌手もいるでし ょうが、基本的には歌を聴かせるためのテクニックのひとつですから、充分計算して歌う タイプの歌手なら感情に任せてビブラートを出すようなことはしないかもしれません。本 人の意図と実際の歌との整合性まで調べるともっと深い研究になりそうです。 【005-3】末っ子の男の子に嗄声が多い 「Prevalence of Hoarseness in School-aged Children」 Emma Kallvik, Elisabeth Lindstr?m, Sofia Holmqvist, ほか journal of voice Vol 29. Issue 2, 2015, p1?19 リンク→ http://www.jvoice.org/article/S0892-1997(14)00124-6/abstract 217人の6?10歳の児童で嗄声の有病率と背景因子を調査した研究です。結果、女児の 7.8%、男児の15.8%に嗄声がみられ、女児は幼児期から習慣的に声をよく使っている場 合、男児は兄弟の末っ子である場合に嗄声の率が高かったとのことでした。 著者らはもっと学童の嗄声に注目し背景を検討すべきと結んでいますが、原因について は特に触れていません。末っ子の男の子に嗄声が多いのは、兄弟の中で大きな声を出した りして積極的に自己主張しないといけない立場だからでしょうか。女の子の場合がよくし ゃべるかどうかだけが重要で兄弟の有無は関係ない、というのと比べると対照的です。男 女で違いがあるというのは面白いですね。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆02. 発声のワンポイント解説◆ ☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、テーマを毎号 ひとつ選んでワンポイント解説します☆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【解説第5回】腹式呼吸トレーニングの誤解 前回は神話的に語られることの多い腹式呼吸について、科学的な意味とメリットを解説 しました。今回はその続きで、「発声のための腹式呼吸の科学的なトレーニング方法」に ついて解説します。 腹式呼吸のトレーニングというと、仰向けになって頭の後ろで手を組んで起き上がる、 いわゆる腹筋運動とか、同じく仰向けで脚と上体を持ち上げてV字になって発声とか、お 腹の上に重りを乗せての発声とか、この辺りを想像される方が多いのではないでしょう か。実際にこれが指導されることも多いようです。しかし腹筋を鍛えて腹式発声ができる なら、散々鍛えているボディービルダー、重量挙げ選手、柔道や野球選手、サッカー選 手、みんな声が良くなるはずですよね。でも現実は違う。ここには誤解があるのです。 おさらいをしますと、腹式呼吸の場合、息を吸うときには横隔膜が収縮して下がり肺が 広がるので、水がスポイトで吸われるように息が肺に入ります。発声のために息を吐くと きには横隔膜が弛緩するとともに、腹直筋・腹横筋などの腹筋群が収縮するため腹腔の内 臓が変形・移動し横隔膜を押し上げて肺が縮み息が出ます。 ここで発声に活かすために知っておくべき重要なポイントは3つ。横隔膜を動かすには 腹部の複数の筋が必要なことと、横隔膜は直接腹筋群に動かされているわけではないこ と、そして、吐くとき横隔膜が充分弛緩していなければならないことです。 単純な腹筋運動は腹直筋のみの収縮を促しているに過ぎず、これだけでは横隔膜を充分 動かせません。腹直筋だけ収縮しても内臓は背側や脇側などへ移動してしまい、横隔膜を 押すとは限らないからです。背筋トレーニングをすごく推奨している本もありますが、そ こまでではないにしてもある程度脇腹の腹横筋や背筋の収縮は必要になります。 息を吐くときには横隔膜が充分弛緩していないと横隔膜をしっかり押すことができませ ん。発声も同時にさせるなら喉頭やその周囲もリラックスしていないといけません。V字 発声などはわざわざ発声が難しい状況を作り出していることになり、決して練習法として 適しているとは言えません。 そして腹式呼吸を強化したいなら横隔膜で息が吸えているかどうかの確認が必要です。 胸式で息を吸っている人が、いくら腹筋群で横隔膜を押してもそもそも横隔膜は動いてい ないので押されようがありません。 ということで、腹式呼吸のトレーニングをするならこれらを押さえた上での実施が効率 的です。 そして最後に最も重要な誤解は、これら腹直筋や腹横筋のトレーニングを呼吸と全く別 にやってしまうことです。類似運動は似て非なるものにすぎません。呼気を強化したいな ら実際に息を吐きながら練習するのが一番です。その考え方に基づいたトレーニング法が 発声フィジ・エクセの負荷ブローイングです。ぜひサイトを参照してみて下さい。 → http://physiexvoice.client.jp/kaisetsu13 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆03. 気になるボイスコラム◆  ☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【気になるその6】癒し声が気になる ◇声の文化◇ 癒やし声が気になります。 最近よく癒し系なんていい方、聞きますね。で「『癒し系ボイス』のカーナビが出た」 という記事を見ました。声にも癒し系があるんですね。癒し系ボイス、すなわち癒し声っ ていうからにはその声を聞くと心がホッとして癒されるってことでしょうか。そもそもど んな声が癒し声なんでしょうか。 調べるとその「癒し系ボイス」のカーナビの音声は皆口裕子さんという声優さんが務め ていました。代表的な役柄はアニメ「Yawara!」の主人公猪熊柔とか「セーラームーン S」のセーラーサターンとかだそうですが、サンプル音声は残念ながら聴けませんでし た。それで試しに「癒し声」でネット検索してみると早見沙織さんとか能登麻美子さんと いう声優さんの名前がありました。それぞれ聴いてみると、声の始まりが際立って柔らか く、音をよく響かせている発声法、という感じでした。 始まりが柔らかい声は軟起声といいますが、これはどんな仕組みかと言うと、声を出す 時には左右の声帯をぴったり閉じて息を出し振動させるわけですが、声帯を端からゆっく り少しずつ閉じていくようにすると声が小さい音から徐々に出始めます。テレビのボリュ ームを徐々に大きくするような感じですね。さて、聴いている側の気持ちになって考えて みましょう。急に音が聴こえる状況と徐々に聴こえる状況とどちらが気持ちいいでしょう か。急に音が鳴るとびっくりしますよね。耳というのは危険察知のための重要な器官で、 生体の防御システム上、急な音にはびくっとするようにできています。モロー反射と言い ますが。ですから恐らく徐々に聞こえた方が気持ちいいと思います。つまり私たちは徐々 に聴こえる声だと安心するんですね。 ちなみにこれと反対に左右の声帯をどんとぶつけて声を出すと硬起声という発声になり ます。これは怖い声とかきつい声という印象を与えるのですが、これも急な音にびくっと する生体の防御システムのなせる技というわけです。 もうひとつの特徴と思われる「音をよく響かせている感じ」というのは、口腔の奥の鼻 咽腔という空間を広げて声を出すとできます。がらんどうの建物内で音を出すと音が反響 して響きますね。あれは同じ音が周波数を変えて何度も跳ね返ってくるのですが、そうす ると和音のように音が何重にもきこえます。だからひとつの音が、たくさんの音に聴こえ る。エコーがかかったようなものですね。これを建物の中でなく口の中でやることができ ます。そうすると響く声になります。舌を押し下げ軟口蓋を上げて、あと咽頭壁も後退さ せるとさらにいいのですが、ちょっと実施するにはトレーニングが必要でしょう。 というわけで生理的に聴き手に危機感を抱かせず、かつ和音のような多重音になる発声 法が癒し声になる、といえそうです。ただ多重音が生物学的にどうして心地よいかは今の ところちょっとわかりません。また考えてみたいと思います。 ところで癒し声の持ち主の方、早見沙織さんとか能登麻美子さんは声以外の他の面はど うなんでしょうか。声帯をどんとぶつけたりせず柔らかく使う、ということからして、物 事や他人にもどんとぶつかったりしないで、柔らかくあたるんでしょうか。発想もパッパ ッと考えるのではなく、落ち着いてゆっくりと考えるんでしょうか。そうなると癒し声と いうのは発声法とか癒そうとしている、というわけではなく、行動パターンということに なりますね。果たしてこの推理は当たっているでしょうか。 というわけで癒し声の持ち主が気になります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆04. 声のなんでもQA◆ ☆言語聴覚士がお寄せいただいたご質問にすべてお答えします メルマガ購読者であれば、どなたでもどんなご質問でもOKです☆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【Q】発声フィジ・エクセはパーキンソン病のささやき声には効くでしょうか 【A】パーキンソン病は筋肉が固縮して特に運動の開始が困難になるなどの症状を特徴と する疾患です。おそらくその特徴が喉頭にも現れて呼気は出ても声門閉鎖運動が開始しに くくなっていると思われます。従ってまず喉頭ストレッチで充分喉頭筋・喉頭周囲筋をほ ぐして動きやすい状態にし、その上で呼吸ストレッチをたっぷりして充分な呼気を出せる ような状態を作り出しましょう。そして呼気のタイミングが合った瞬間に声をかけつつ呼 気介助をして発声させるてみて下さい。これによりささやき声しか出ないケースであって も発声できる確率がぐんと高まります。一度声が出ればしばらくの間は続けて出せること が多いようです。これを繰り返し練習すると、ささやき声であっても普段からある程度声 が出しやすくなります。 ポイントは発声のタイミングで加える呼気介助で、これは声門の運動開始を促すために 背中を押しているようなイメージで行ないます。合図になるようにポンっと押すと効果的 ですのでぜひ試してみて下さい。 ■QAコーナーへのご質問をお待ちしております。  → http://physiexvoice.client.jp/mail.html TwitterでもOKです → http://twitter.net/PhysiexVoice ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆05. 編集後記◆ 前号の編集後記で「メルマガのタイトルを改めたいが配信サイトの「まぐまぐ」は変え られない」と書きましたが、問い合わせたところ可能とのことでした。ということで、こ れから正式にメルマガのタイトルを「発声は面白くて深い!Let's声の筋トレ」に改めた いと思います。皆様ご承知おき下さい。内容はますます充実させていきたいと考えており ます。少し先になりますが、新コーナーも準備中です。今後ともよろしくお願い申し上げ ます。 ■次号vol.006発行予定 2015年04月20日 発声ワンポイント解説第6回「筋肉と加齢」 気になるボイスコラム「集団アイドルの声が気になる」ほか ======================= Biweekly Physiex Voice Magazine 発声は面白くて深い!Let's声の筋トレ(無料) vol.005 2015.04.06号 ( 毎月第一・第三月曜日発行) ■発行人・編集人:  発声フィジカル・エクセサイズ研究会 主宰 渡邉佳弘(言語聴覚士・学術博士)  → http://physiexvoice.client.jp/ ■内容に関するご質問・お問い合わせ先:  → physi.ex.voice@gmail.com  または下記メールフォームから  → http://physiexvoice.client.jp/mail.html ■QAコーナーへのご質問をお待ちしております。 ■QAコーナーへのご質問をお待ちしております。 ■QAコーナーへのご質問をお待ちしております。 上記アドレスか http://twitter.net/PhysiexVoice からお寄せ下さい。 ──ご注意──────────────────────  本メールのアドレスは送信専用のため、メールアプリの  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